南カリフォルニア教育講座
by オンラインスクールS.E.E.S.
教育関係者の方へ
いつも、子供たちのために全力を尽くしていらっしゃる教育関係者の皆さん、
本当にありがとうございます。
社会の一員として、心から感謝します。
世界に誇れる素晴らしい日本の教育は、熱心に子供を思いやる先生方に支えられています。この講座は、そんな「子供のために多様な教育を」という情熱を持つ先生方のためのものです。
熱意のあるアメリカの先生方との出会い
4年ほど前、私はカリフォルニア州オレンジ郡の地元の小学校の学校見学をしていました。
そこで、校長先生がお話ししてくださったのは「一人一人の子供によりそう教育」と「20年後の未来を見据えた教育」という熱意でした。それは、教育者として日々の子供たちの心身のニーズにこたえていくとともに、20年後の社会ではどんな生きるスキルが必要となってくるのかという問いと実践でした。
また、学校が始まるとすぐに、カリフォルニアの学校では、子供の心の健康にも気を使ったプログラムであることがわかりました。息子の1年生の先生は、子供たちが朝教室に入るときに、一人一人にみんなの心の状態を聞き、心が落ち着かない子供は、教室の隅に用意されている、一人になれるソファーに座って良いことになっていました。学校になかなか馴染めなかった息子は、そのソファーにとてもお世話になりました。
日本で育った私にはカリフォルニアの教育方法が珍しく、興味を持ち、いろいろ調べるようになりました。
←息子の学校で使われていた感情のカラーチャート。教室の入り口に貼ってある。
子供たちは毎朝先生の前で色を指差すことで、自分の気持ちを伝える。
4月前半の「マインドフルネス、セルフケアって何?」のクラスで詳しく解説します。
熱意のある日本の先生方との出会い
私は、2020年春に鹿児島に帰省したところ、コロナの感染拡大でアメリカに帰国できなくなり、1年間、息子と地元に滞在することになりました。息子は日中は鹿児島にある尾崎小学校に通学し、放課後はカリフォルニアのタスティン市のホームスクーリング用の小学校(Tustin conect)にオンラインで通うというダブルスクールを体験することとなりました。
尾崎小学校は山間にある、全校生徒10名程度の小さな学校です。海外育ちの息子を暖かく受け入れ、熱心に指導してくださった先生方には感謝の気持ちしかありません。また、コロナ禍の緊急事態とはいえ、国外からのオンライン受講を許可してくれたカリフォルニアの教育制度にも感謝の気持ちでいっぱいでした。
当時、息子は日本では1年生、カリフォルニアの学校では2年生の授業を受講していました。2つの学校の課題をこなすのは大変だったので、毎日、尾崎小学校でもカリフォルニアの学校の算数などの課題も手伝っていただいていました。
その年、たまたま尾崎小学校には海外の教育にとても関心の高い先生方がいらっしゃって、カリフォルニアの教育について、たくさんの質問をいただきました。このコースは、その先生方の質問に真摯に答えるべく、デザインしました。
「日本では無理」を「できるところから」に変えていく
最近、教育現場を心配させるニュースが溢れています。例えば、子供の自殺の多さや不登校の多さ。OECD先進7ヵ国の調査で、日本の子供の精神的幸福度がワースト2位という結果も報告されています。
教師一人の力ではどうにもならないと、感じてしまうのは無理もありません。
一方で、カリフォルニアの子供の心のケアを見ていると、学校に本格的なスクールカウンセラーを雇うなど、制度を大きく変えなければどうしようもないようなこともあれば、上記で紹介したような、担任の先生が生徒の今日の気持ちを聞くという、シンプルな試みもたくさんあることに気がつきました。
このコースでは、そんな、日本の教室でも気軽にとりいられそうなアイデアや教育ツールを、毎回、紹介していきたいと思います。
カリフォルニアの子供たちは、社会を変えるためには、まず、一人が行動することからと教わって育ちます。
国や制度が変わるのを待つ間に、一緒に、小さな変化から起こしていきませんか?
道徳の授業が人権教育になっていない日本
日本の教育現場でも、SDGs(持続可能な開発目標)を頻繁に聞くようになりました。しかし、SDGsの掲げる社会問題と教師がどのように向き合い、それをどう子供たちの教育へ落とし込むかという実例はまだ少ないのではないでしょうか?特に、日本の苦手分野であるジェンダーの問題や人種の問題、政治を扱う問題については、どのように子供たちに伝えて良いかわからないという方も多いのではないでしょうか。
例えば、日本で行われている道徳や人権の授業と、カリフォルニアで行われている人権教育は全く内容が違います。日本の授業では「お友達に優しくしましょう」「周りの人に感謝をしましょう」という教えが多い気がします。一方で、カリフォルニアでの人権教育は、5歳から毎年、はっきりと差別とは何かを教え、差別の歴史を教え、その解決方法について子供たちとじっくりディスカッションします。
まずはセルフケアから
とはいえ、たくさん学ことはありますが、まずはゆっくり寝て、体を動かして、自分をいたわってあげてください。
最近のカリフォルニアでは「まずはセルフケアから」という言葉をよく聞きます。子供の教育にもそれは反映されており、このコースでも、4月前半の授業で取り上げますし、zoom授業では、毎回授業の初めに、カリフォルニアの子供たちが実際にしているマインドフルネスの短い実習をしていきたいと思います。
セルフケアは、大人にとっても大事なことです。自分自身がじっくり休めていて、心の余裕がないと、子供を含めた周囲の人の問題に意識を向けるのはとても難しくなります。
このコースでは、10月前半に、男性自認の方と女性自認の方のグループに分かれて、大人のセルフケアについても学びます。
子供の権利を知ると同時に、自分の権利についても学ぶ
子供のセルフケアを助けると同時に、自分もセルフケアをして、一緒にハッピーになる
そんな幸せなサイクルができればと思います。
大石貴子