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京都大学構内の演劇について

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大石貴子が、京都の演劇文化から影響を受け制作した写真

(この文章は2011年のアメリカでの写真集出版時に書かれたものです。)
 

京都は学生演劇のさかんな街とよく言われるが、それはただ学生が多いからで、

東京に見られるような手頃な芝居小屋はおどろくほど少ない。そのため京都界隈

の学生劇団は大学構内の施設で公演を行うことが多い。京都大学の場合、西部講

堂、文学部控え室、そして吉田寮食堂の三つが演劇の「メッカ」である。

 

このうち一番大きいのが西部講堂だ。文字通り京都大学の構内西側にある大きな

建物で、学生粉争を経て学生の自治管理施設となった。かつてはポリスのような

海外ロックスターがコンサートを開催したこともあり、どちらかというと演劇よ

りもロックの舞台として知られているが、演劇をやるにも申し分ない広さだし、

天井も高くて使いやすい。季節の良い頃は講堂前の広場に仮設舞台が作られるこ

ともある。管理については西部講堂連絡協議会という組織が長く細やかに行って

きており、そのためか築年数のわりに中も綺麗だが、専用の芝居小屋に比べると

さすがに老朽化は否めないところだ。また、連絡協議会での承認が必要であるた

めか、利用する劇団はそう多くないのが実状である。

 

一方、文学部控え室は文学部棟の一階にある小規模な部屋だ。やはり学生の自治

管理施設で、普段は美術系サークルの例会などに利用されている。月に一回、利

用について議論するための委員会が開催されているが、積極的に利用しようとい

う団体が少ないこともあって、比較的使いやすい施設である。コンパクトである

ことから劇団の新人公演など小規模な舞台に利用されることが多いほか、夏と冬

の年二回は深夜に「やみいち」と呼ばれる即興芝居が行われることでも知られて

おり、この日だけは部屋から溢れんばかりの人が集まって異様な雰囲気となる。

問題は老朽化が進んでいること。また、そもそも演劇に利用されることなどまっ

たく想定されていない部屋なので、特に天井に照明を釣るのには技術を要する。

おまけに、京都大学の構内全般に言えることだが、冬はとても寒い。

 

最後がこの写真集の舞台、京都大学吉田寮の離れにある吉田寮食堂だ。かつては

食堂であったが、80年代に吉田寮の存続と引き換えに食堂機能が廃止され、以来

さまざまなサークルがイベント会場として利用されている。演劇の舞台としても

よく活用されており、毎年春に行われる吉田寮祭では寮生を中心とした「吉田寮

しばい」の上演が通例である。食堂は十分に広いが、古い建物らしい立派な太い

柱がそこかしこに立っているため、舞台設計者は頭を悩ませる。西部講堂ほどで

はないが、やはり建物横に広場があって、こちらに仮設舞台が作られることもあ

る。いずれにせよ建物の老朽化が進んでいることは、もはや言うまでもない。

 

小関悠

京都大学工学部情報学科卒(1999-2004)

京都大学大学院情報学研究科修士過程修了(2004-2006)

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